弁護士コラム - COLUMN

2019年3月28日

「離婚事例について」

弁護士生活30年の中で様々な離婚問題についての依頼がありました。

 

その中から記憶に残る次の2つの事例を取り上げて紹介させて頂きます。

 

事例1
 夫婦間の些細な言い争いから離婚調停、訴訟、そして控訴審を経て妻が一旦離婚の意思を翻したにもかかわらず、最終的に離婚に至った事例

 

内容
 この事例は、結婚してしばらく赤ちゃんが出来なかった夫婦に待望の赤ちゃんが産まれた喜びも束の間、仕事と育児に追われた奥さんがそのストレスと夫の育児への無関心さに腹を立て、目の前の赤ちゃんを手荒に扱ってしまい、それを見た夫が初めて妻を怒り、妻から赤ちゃんを取り上げたことから、妻は夫のこれまで見せなかった怖い態度に驚き家を飛び出しました。

 

一人赤ちゃんと家に取り残された夫は、困って実家に行き赤ちゃんの世話を頼んだところ、興奮から覚めて我に返った妻が家に戻り、赤ちゃんも夫も居なくなっていたことから、妻が夫に赤ちゃんを取られたと騒ぎ出したという事案でした。
 妻は、一旦は夫の実家で夫の両親や夫、赤ちゃんと一緒に暮らそうとしましたが、夫の両親と同居になった事や夫への不信感から長続きしないで、実家に帰り妻の両親と共に夫の実家に赤ちゃんを取り返しに来たりしましたが、果たせずに弁護士に依頼して、子の引渡しの仮処分や監護権者の指定の仮処分、そして離婚調停などを申し立ててきました。
 私は、その段階で夫から相談を受けましたが、その時の夫の様子は妻や妻の両親への対応で疲れ切っており、どうして良いのか分からないという感じでした。
私は、相談者である夫の話を聞いてこの夫婦が離婚する必要が無いのではないか、と思いました。
 何故なら、夫婦が子供を巡って離婚問題にまで発展したものの、その元をたどれば妻が育児の大変さから仕事と育児の両立ができなくなり、そのストレスから赤ちゃんに当たり、それを見た夫が慌てて妻の行いを諌めただけのだったからです。 私は、折角仲の良かった夫婦がたったそれだけの事で離婚することがあってはならないと考えて、相談に来た夫に離婚を思いとどまるべきであると説得しました。すると、夫は、私の説得を受け入れて離婚を思い止まり、妻と元の家族として暮らしていく事に同意してくれました。
 ところが、夫に子供を取られたと思い離婚まで決意した妻は、私が離婚する理由が無いから、復縁の道を検討しようと提案しても全く耳を貸そうとしませんでした。
 他方、私の離婚をする理由がないとの主張は、裁判所の賛同を得て調停が進められましたが、妻の同意を得られずに不成立となりました。
 妻は、子供の親権を求めて訴訟を提起しました。訴訟になっても裁判官は、私の主張を聞き入れて離婚を思い止まるように妻を説得してくれました。しかし、妻の夫に対する不信感を払拭することが出来ませんでした。その結果、夫を親権者とする離婚の判決がなされました。
 妻は、当然控訴しました。控訴審においても、裁判官は、妻に離婚を思い止まるように説得しました。しかし、妻は、頑として離婚する意思を変えようとしませんでした。

 

 私は、このまま妻と夫の仲が戻らずに離婚となってしまう事に苛立って、裁判官に妻に直接合わせて欲しいと申し出ました。裁判官は、私の真剣な願いを聞き入れてくれました。

 

 私は、妻と直接会って話す機会を与えられたので素直に駆引きせずに今回のトラブルの原因が些細な事で離婚しなければならないようなものでないこと、そしてこのまま離婚した場合の悲惨な結果について話しました。
 するとそれまで頑なに心を閉ざしていた妻が離婚の気持ちから元に戻る気持ちに変わったのです。私は、意味の無い離婚が一つなくなったと思い、とても嬉しく思った事を覚えています。
 ところが、喜びも束の間に隣にいた夫が元に戻る気がないと言い出したのです。私は。言葉を失ってしまいました。結局、この妻と夫は、離婚となり、子供は、夫の実家で夫と夫の両親と暮らす事になりました。
 この離婚事件は、私の弁護士人生の中でも離婚を決意した妻がその決意を翻した唯一の事例として記憶に残るものです。また、離婚しないことに同意していた夫が土壇場でその気持ちを翻した事で、離婚になってしまったという苦い思い出の事案です。
 このように一度こじれてしまった夫婦関係は、中々元に戻らない事を示した典型的な事例だと思います。