弁護士コラム - COLUMN

2021年8月17日

尊敬すべき裁判官

当職は、弁護士登録してから30年も経ちました。当職は、その弁護士生活の中で多くの裁判官、検事、そして先輩弁護士の方々から沢山の事を学ばせて頂きました。

その中でも当職は、弁護士登録して10年もしない頃に受任したある建設会社を被告として提起された損害賠償請求事件を担当して頂いた裁判官の事件処理の仕方を今でも忘れることが出来ません。

その損害賠償請求事件は、相手方である原告が被告である建設会社から約束違反をされたのでそれによる損害賠償を求めるというものでした。

当職は、建設会社の担当者からその事件についての説明を聞いて負ける事などないと考えていました。当職は訴訟が進んでその事件の内実をよく知る人物を証人として申請しました。ところがいざ、その人物を証人として喚問しようとしたところ、その人物は、あろうことか自分の話を聴きたいのなら自分が裁判所に出向くのではなく、裁判官が自分のところに話を聞きに来るべきだと言い出しました。

当職は、その話を聞いて慌てました。しかしながら、当職が証人として申請した人を説得しようとしてもその人物は当職の説得を全く聞こうとしなかったのでやむを得ず担当裁判官に恐る恐るその事を告げると、その裁判官は、慌てる事なく出張尋問を行うとの決定をしました。当時当職は、そのようなことは考えませんでしたが、もし裁判官が当職の立場をも考慮して出張尋問の決定をしたとしたら当職にとってはとても喜ばしいことだったと思います。

その人物についての出張尋問がなされた後にその担当裁判官により損害賠償請求事件についての判決が下されましたが、見事敗訴でした。当職は、判決を見ても何故敗訴なのか良く分かりませんでした。

ただ当職は、その裁判官がその損害賠償請求事件の核心を見抜いていたのだと思いました。そして当職は、損害賠償請求事件の核心にまったく気付いていなかったことを恥じました。

ちなみにその人物が裁判官に出張尋問を求めたのは、その事件を解明するためには、ある人物の証言が不可欠であるはずであるから、その事を裁判官が認識していれば必ず出張尋問をするだろうし、万一、裁判官が出張尋問をしないのであれば、事件の核心を認識していないのだから証言しても意味がないとの考えからであるとのことでした。

当職は、この裁判官が事件の核心を見抜いた能力に感服するとともに、自らの非力さと経験の無さに気づかされ、一層事件の核心を見抜く力を身につけるように努力をしました。しかしながら、当職の事件の核心を見抜く力は、現在でもその裁判官の足元にも及ばないだろうと思っています。

この裁判官は、最高裁判所の裁判官になるのではないかと言われるほどのエリート裁判官でした。

この裁判官は、当職がある検事を特別公務員暴行陵虐致傷罪で告訴し、後に国家賠償請求訴訟を提起した時に担当した部長裁判官で、この時も第一回弁論期日で、もしこれが本当なら、司法の威信が傷つけられ、維持できないと嘆かれたのを覚えています。この事件は、おそらく平成5、6年頃の事件だったと思っています。

もう一つ忘れてならない事として当職は、弁護士登録してすぐ仙台弁護士会の消費者問題特別委員会と民事介入暴力対策運営委員会に籍を置きました。

民事介入暴力対策運営委員会は、現在でも籍を置いています。

特に消費者問題特別委員会在籍中は、その委員長と副委員長から「当職に事件処理を任せれば何とかなる」との見立てから、様々な事件を担当させて頂きました。この事が、現在の当職の力の源になっています。

当職のように凡庸な人間は、色々な事件を担当して初めて事件の核心を見抜く力を身につけられるようになると思っています。

その意味で前述のお手本とも言うべきである裁判官や消費者問題特別委員会在籍中の正副委員長が与えてくれた経験は、きわめて貴重な体験であり、当職の宝だと思っています。